粗忽評判記 (山本 周五郎)

一 苅田久之進(かりたきゅうのしん)は粗忽者(そこつもの)という評判である。粗忽者といってもどの程度に粗忽なのかはよく分らない、いちどそういう評判をとってしまうとつまらぬ失策まで真らしく喧伝(けんでん…