小説「渚の調香師」1話③

第三回:記憶の部品 その写真は、真壁の指先の熱を吸い取っていくかのように冷たかった。自室の机に置かれた「結衣」の姿。五年前、光の中に溶けかけていた彼女の輪郭は、アトリエ渚で嗅いだあの匂い――古い紙束と、乾ききった潮風の記憶――と重なった瞬間、暴力的なまでの色彩を取り戻していた。 写真は、数年間の忘却とい…