夏目漱石の《文鳥》もういない人の幻を籠の中に視る官能|日本の近代文学

夏目漱石が1908(明治41)年に発表した短編小説《文鳥》。初めて読んだときは冒頭から中盤にかけて、これは作中の「自分」が文鳥を飼うこととその様子を、淡々と繊細に描写した話なのだろう……と勝手に思い込んでページをめくっていた。実際、そんな感じで物語が進むのだ。しばらくの間は。だが中盤、とある段落に差し掛か…