草原(ある種の傷は癒えるほどかなしくなる)

適切な薄さの白いティーカップを手のひらで撫でまわし、じっと眺めては、陶器に傷などひとつもない方がよいと考える。わずかなひびでも生じてしまったら最後、にわかに存在自体を受け入れがたくなるのが目に見えているし、食器棚にしまっておくだけでなく視界に収めるのすら嫌になるだろう。よほどの品でもないかぎりは、…