アニー・エルノー 著、堀茂樹 訳『シンプルな情熱』より。アートは自由にする。恋愛も自由にする。

ものを書くという営みの時間は、恋の時間とは、まったく別物だ。 けれども、ペンを執った時点では、書くのは、まさにあの、見る映画の選択から口紅選びまで、何もかもが同じ方へ、ある人の方へ向かって流れていた時間の内にとどまるためだった。最初の数行から、ごく自然に「・・・・・・していた」「・・・・・・するのだった」という…