小川糸 著『あつあつを召し上がれ』より。本当に美味しい食べ物も、異性に対する好きという気持ちも、悩ましい。

「美味しい」 口の中にまだ熱々のしゅうまいを含んだまま、それでも驚きの声を上げずにはいられなかった。固まりの肉を、わざわざ叩いて使っているのだろう。アラびきの肉それぞれに濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する。「うん、やっぱりここのしゅうまいは、天下一品だね」 恋人も、コップに残…