平野啓一郎 著『三島由紀夫論』より。執筆開始から23年。670頁の大作。読まねばならない!

本書は、三島が最後の行動に至る軌跡を、その作品に表現された思想に忠実に辿るものだが、では、その死が必然的なものであり、不可避であったかと言えば、必ずしもそうとは思わない。三島自身が政治思想の偶然性を強調している通り、『鏡子の家』に対する文壇の無理解など、本人は深く傷ついているが、今にしてみれば、く…