辻仁成 著『音楽が終わった夜に』より。歌はもう終わった。しかしメロディーは鳴り響いている。

最後にそこを使ったのは、ちょうどエコーズの解散コンサートの直前だったので、初めて顔を出した時から本当に十年という歳月が流れていた。 もうみんな、何を見ても驚いたりはしなかった。あまりプライベートなことも話さなくなっていた。相変わらず練習は好きだったが、お互いの心の中に大きなわだかまりを残しての解散だ…