平野啓一郎 著『ある男』より。文学ワイン会「本の音 夜話」で平野啓一郎さんの話を味わった翌日。

颯太がどことなく不安定なのは、この二週間ほどのことだった。公文の宿題をやらないと香織が叱りつけるので、元々、過熱気味の幼児教育に否定的な城戸は、「足し算なんて、どうせそのうち出来るようになるんだから、今そこまでしてやる必要はない。」と息子を庇い、口論になった。子どもの教育問題が、意外に根深い夫婦の…