平野啓一郎 著『マチネの終わりに』より。平野さんの話を味わった夜。文学ワイン会「本の音 夜話」にて。

トーマス・マンは、「偉大さと大衆との断絶」に言及して、ゲーテが死んだ時には、「大いなる牧羊神の死を悼むニンフたちの嘆きの声ばかりではなく、『ほっ』という安堵の溜息もはっきりと聞こえたのでした。」と語っている。ゲーテでなくとも、天才とは、周囲の者の生にとって、常に幾ばくかはそういうプレッシャーの源で…