星野道夫 著『旅をする木』より。幸福とはどういうものか。よく生きるとは。

町から離れた場末の港には人影もまばらで、夕暮れが迫ってきた。知り合いも、今夜泊まる場所もなく、何ひとつ予定を立てなかったぼくは、これから北へ行こうと南へ行こうと、サイコロを振るように今決めればよかった。今夜どこにも帰る必要がない、そして誰もぼくの居場所を知らないそれは子ども心にどれほど新鮮な体験だ…