猪瀬直樹 著『僕の青春放浪』より。人はだれも自分の青春を救済するために一生を費やす。

五年過ぎたところで黒帯の試験を受けることになった。娘も同じとき二段の試験を受けた。いっしょに出かけたが、帰りは喧嘩になった。娘だけが受かって、僕が落ちたからである。不機嫌な父親は、娘に「おまえねえ、受かったからってあまりいい気になるなよ」などと張り合ったのだ。「なによ、私は人一倍努力したんだもの、…