角幡唯介 著『空白の五マイル』より。危機があるから、驚喜もある。

岸壁を高巻き始めたのが午後一時だった。ジャングルの中で格闘しているうちに日没が近くなり、あたりは次第に暗くなり始めた。高巻きを終えるのに二、三時間と考えていたが、一向に岩壁を越えられそうになかった。山のスケールを見誤っていたのだろう。川や尾根が日本の山よりはるかに大きいのに、私は同じ感覚で登り始め…