平野啓一郎 著『考える葦』& 映画『マチネの終わりに』( 西谷弘 監督作品)より。3年半前の小説体験を変える映画体験。

もう一つ、子供を育てるようになって、やはり、自分自身の幼い頃の心情がしきりに思い返されるようになった。そして、当時はよくわからなかった、子供を見つめる大人たちの心情も。 そんな風に今、手に取って左見右見している記憶は、この先また十年、二十年と長くもつものではあるまいか。 懐かしい郷里への愛着も、そう…