再生1,505回 · リアクション61件 | この年齢になってくると、のんびり読書したり、旅したりの悠々自適生活が訪れるかと思っていたら、とんでもなくて、仕事が雪崩のように眼前に押し寄せ、ついに小説も書けなくなってしまいました。昨日も、東川篤哉さんの『密室の鍵貸します』を、NYのパグマイアさんが英訳刊行することを決定したので、巻頭解説を書いて欲しいと言ってきました。このプロジェクトにはちょっとしたトラブルがあって、光文社との間に入って、いくらか尽力もしました。ほかにも山のように控えた様々なお仕事、面白いものもあるので、時間があればここでお伝えします。 『伊根の龍神』と、石岡君のお引越し+入院騒動という2つの長編も書かなくちゃ、なのだけれど、その前にオペラ「黒船」を作らないとね。来る七夕の宵には、いつもの原宿ラ・ブーレットで音楽&お食事会、このおりにはバリトン、村どんさんのアリアを加えた3曲を「黒船」から披露の予定ですが、クリスマスには音楽劇のできたら全体を、上野あたりで公開練習したいと思っています。そこでもっか、曲作りに励んでいるところです。 以前にここで、1幕目の内容をお話ししましたが、塩塚隆則さんのソロ、「国破れて」のあとは、パニックになって階段を下りてくる江戸城の幕臣たちの場。「黒船じゃ、黒船が来た!」、「戦じゃ、戦!」、「国を守れ!」、「まずは長崎に廻ってもらえ!」などのレチタが、速いリズムに乗せて叫ばれ、それがみるみるリットして時間が巻き戻り、ビートルズ好きとしては、ここにヴァイオリン・バスのマッカートニーふう5度のベースが聞こえるのですが、謹子が登場。下手に立つ阿部正弘に歩み寄りながら、恋の歓びが持つ高揚を、これに乗せ、スキャットのソプラノで歌います。 これがかなりの難曲で、日本にはこれを歯切れよく歌えるソプラノはいないのでは──? という不安を持っています。 待ち受けた阿部正弘がこれに応え、西に美しいうち海があり、重なり合う島影には松影が風に揺れて、朝日が射せば海は黄金になる。それはさながら金の屏風絵だ、あれをそなたに見せたい、と思いを歌います。長調に転じて謹子がまたそれに楽しく応え、一部は声を重ねてハモり、あなたの腕の中で目を閉じ、胸の中に寄せてくる波の音を聞きたい、などと歌います。 要するに2人の出逢い時のラヴシーンなのですが、ここまで作りました。そのあと、月の綺麗な夜に、あなたを乗せて海を渡る、銀の小舟に私はなりたい、と謹子は歌う予定です。まだ完成はしていないけれど、次幕のソプラノ曲も、できているものがあります。けっこう悪くない音楽劇ではと今は感じているので、七夕かクリスマスに、是非聴きに来て下さい。 前のコンサートで歌われた、テノール塩塚さんの「国破れて」をお聴かせしましょうか。前半1カ所、大きくミスしているのですが、それが全然気にならないほどの、心揺さぶられる見事な歌唱です。これだけ全霊を打ち込んだ歌唱で応えてもらえれば、作った者は冥利に尽きます。まだ渡して間もなく、さして歌い込んでもいないのに、これはもう粗削りゆえの名唱の域ですね。中野裕之監督が、後方の自席から撮ってくれた動画です。 | Soji Shimada
この年齢になってくると、のんびり読書したり、旅したりの悠々自適生活が訪れるかと思っていたら、とんでもなくて、仕事が雪崩のように眼前に押し寄せ、ついに小説も書けなくなってしまいました。昨日も、東川篤哉さんの『密室の鍵貸します』を、NYのパグマイアさんが英訳刊行することを決定したので、巻頭解説を書いて欲…