わたしはもうもどらない|本屋の時間|辻山良雄

五月、店の営業を再開するとき、レジカウンターに透明のフィルムを設置した。フィルム越しに話すことは、最初、変わってしまった世界を否が応でも思い出させたが、いまその存在が意識にのぼることはほとんどない。   そうしたことはたくさんあって、さきほどまで話をしていた人が、帰り際にマスクを整える姿を見て…