コロナ時代に読む『八甲田山死の彷徨』、あるいは大いなる物語に飲み込まれることの恐怖

// 新田次郎『八甲田山死の彷徨』読了しました。雪山の寒さ自体は分け隔てなく人体に影響を与えるけれど、力尽きる順番は決して平等ではない。極寒の露営地で、焚火に当たることができたのは将校クラスの者だけ。“この夜も死の序列はその階級序列におおむね従っていた”(P.203)という一節が重くのしかかる。ウイルスによ…