小川洋子『密やかな結晶』から『小箱』へ―記憶と喪失の物語を紡ぎ続けて
小川洋子さんの小説は、『博士の愛した数式』をはじめ海外でも翻訳されて高い評価を得ている。2007年フランス芸術文化勲章シュバリエ受賞。19年には、執筆から25年を経て『密やかな結晶』の英訳版が米国で刊行され、新たに注目を集めた。『アンネの日記』を意識したという同作から、7年ぶりの長編『小箱』に至るまでの執筆…