松家仁之『火山のふもとで』感想。文章を味わい、余韻に浸る。

「夏の家」では、先生がいちばんの早起きだった――。物語は、1982年、浅間山のふもとの山荘で始まる。「ぼく」が入所した村井設計事務所は、夏のあいだだけ、軽井沢の別荘地に事務所機能を移転するのが慣わしだった。所長は質実で美しい建物を生みだしつづけてきた寡黙な老建築家。秋に控えた「国立現代図書館」設計コンペ…