平野啓一郎「あなたが、いなかった、あなた」

長編「決壊」でその実力を実感させられた平野氏の短編集ですが、その中で個人的に突出して心に染みいったのは「フェカンにて」。どこからどうみても平野氏本人を思わせる小説家「大野」が、フランスのフェカンに立ち寄る、というそれだけの話なのですが、その短い、特にハプニングもない旅も、ここまで味わい深く描き出せ…