さだまさし『夢しだれ』〜咲きながら散る愛、桜と風が、恋の名前を奪っていく

奈良を歌った曲は数あれど、ここまで優美で、ここまで切なく、斑鳩から秋篠へと流れる春の気配を“逢瀬”と“ためらい”と“別れの予感”の物語として結晶させた歌は他にない。 さだまさしは、名所を並べるだけの作家ではない。場所に積もった時間、美の記憶、そして人が口にできない感情の揺れまで掘り当ててしまう。 『夢しだ…